治療について
原発性免疫不全症(PID)に対する治療には、以下のようなものがあります
保存的治療
1.抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬の予防・治療的投与
- PIDの病型によって易感染性を示す病原体は異なりますが、それに応じた抗微生物薬を予防投薬して、感染症を防ぎます。
- SCIDでは、ST合剤(バクタなど)、抗真菌薬(イトリゾールなど)、抗ウイルス薬(バリキサなど)を内服します。
- BCDでは、免疫グロブリン補充をしていれば、原則的には内服は行いません。
2.免疫グロブリン補充療法
- SCID、BCDでは、免疫グロブリン補充療法を行います。
- 不足している抗体=免疫グロブリンを補う治療です。
- SCIDでは移植が成功するまで、BCDでは生涯にわたって投与をします。
- 血管の中に点滴する方法(静注療法)とおなかや太ももなどの皮下に注射する方法(皮下注療法)があります。
3.免疫抑制療法
- 免疫系が暴走するような免疫制御異常症(自己免疫疾患)や自己炎症性疾患の場合、ステロイド、免疫抑制剤(CsA, Tacなど)、抗サイトカイン製剤(抗TNFα、抗IL1など)などの免疫抑制療法が必要になる場合があります。
根治的治療
4.造血幹細胞移植(HSCT)
- 造血幹細胞移植は、白血球(好中球、リンパ球など)、血小板、赤血球のもとになる造血幹細胞を含む、臍帯血、骨髄、あるいは、白血球を増やす薬(G-CSF)を用いて末梢血に動員した幹細胞を移植することで、免疫系、血液細胞を入れ替える治療法です。
- 一般的に、長期予後が50%以下の疾患に対して行います。
- 特に、細胞性免疫不全症(T細胞、好中球、マクロファージ、樹状細胞の重症の分化異常、機能異常)に対して根本的な治療法となります。
5.遺伝子治療
- 2000年にAlain Fischer博士のグループが、γC遺伝子異常によるX連鎖SCIDに対して遺伝子治療を行って、成功して以来、安全性を向上させ、他のPIDに対しても対象が拡大してきました。この業績により、Alain Fischer博士は 2015年の日本国際賞(Japan Prize) を受賞されています。現在、ADA欠損症による SCIDに対して、欧州では保険適応となっています。さらにWiskott-Aldrich症候群(WAS)、アルテミス欠損によるSCID、慢性肉芽腫症(CGD)などに対して臨床研究が進行中であり、他の疾患に対しても基礎研究が進んでいます。
- 2017年の日本国際賞、2020年のノーベル賞を受賞されたクリスパー・キャス9(CRISPR/Cas9)を用いた遺伝子修復療法も研究が進んでいます。
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